2021.06.20

276号 mRNAワクチンって何?

コロナワクチン、毎日のように聞く話題ですが、それとともに「mRNAワクチン」という言葉もよく耳にします。このmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンはご存知のように、ファイザー社やモデルナ社製のコロナワクチンです。このワクチンは今までとは全く違うメカニズムのワクチンです。

◆そもそもワクチンとは  外敵(ウイルスや細菌)が体内に侵入(感染)すると、体内で外敵をやっつけるために免疫細胞が働きます。「免疫」とは、すなわち「疫病(感染症)を免れる」ために、もともと人の体に備わっている防御システムです。免疫細胞は外敵と戦うために武器をつくります。それが「抗体」です。しかし、初めての敵に対しては、どう戦えばよいのか分からないので、武器である抗体を作るのに時間がかかってしまいます。しかし、免疫細胞は一度戦った敵の顔や特徴を覚えているので、次に同じ敵が体に侵入すると、速やかにそれを見つけだし、以前用意しておいた抗体という武器で速やかにやっつけてくれます。この働きを利用したのが「ワクチン」です。ワクチンにより、外敵を少しだけ体の中に入れて、免疫細胞に顔や特徴を覚えさせ、武器である抗体を用意させます。すると、本当にその外敵が体の中に入ってきた時に、素早く効率的にやっつけることができます。

◆生ワクチン・不活化ワクチン  生ワクチン・不活化ワクチンは子どもの予防接種でお馴染みですね。生ワクチンは生きたウイルスや細菌の毒性を、免疫が作れてなおかつ症状が出ないぎりぎりまで弱める処理をしたものです。水痘・MRBCGなどですね。不活化ワクチンは、感染力を無くしたウイルスや細菌の死骸を使います。1回の接種では免疫が充分にできないので、数回接種する必要があります。ヒブ・肺炎球菌・インフルエンザなどがあります。

mRNAワクチン  mRNAワクチンは、生ワクチンや不活化ワクチンのように、ウイルスそのものを使うのではなく、ウイルスのmRNAという分子を使います。mRNAとは、DNA(遺伝子)の遺伝子情報、つまり遺伝子の設計図をコピーしたものです。
 新型コロナウイルスは、ウイルスの外側にある、あの「トゲトゲ」を使ってヒトの細胞内に侵入し感染します。あの「トゲトゲ」はスパイクタンパク質と言いますが、mRNAワクチンにはこの「スパイクタンパク質」の設計図となるmRNAが含まれています。
 ワクチンとしてヒトの体内に入ったmRNAは、ヒトの細胞内に入り込みます。すると細胞の中にある「タンパク質製造工場」は、mRNAにコピーされている設計図を見ながらあのトゲトゲのスパイクタンパク質をつくり、細胞の外に出します。製造工場としては設計図どおりにタンパク質をつくる、といういつもの仕事をしただけなのですが、このスパイクタンパク質は本来ヒトの体内には存在しないものです。そこで免疫細胞は外敵が侵入したと判断し、抗体を作りやっつけます。そして、免疫細胞はスパイクタンパク質の顔と特徴を覚え、本当に新型コロナウイルスに感染したときに速やかに戦える準備をします。役目を果たしたmRNAはすぐに壊されます。あくまでmRNADNAの情報をコピーしただけのものなので、mRNAからウイルスのDNAを作ったり、人間のDNAの中に組み込まれたりすることはありません。

◆副反応 まれにアナフィラキシーなど重篤な症状が報告されていますが、発熱やだるさ、また接種部位の痛みや腫れなどは多く見られるようです。しかし、副反応は、免疫反応のあらわれと考えられ、きちんと免疫ができている証拠ともいえます。どのワクチンでも副反応の可能性はありますから、きちんと理解しておくことが大切ですね。